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2014/12/1 親の意地・子の思い
こんにちは!
「2人にしかできない」
「ユニークでオリジナルな」
新しい結婚式を提案する、アーケイディア代表・森川さおりです。
今日は、数年前、私が会場付きプランナーだった頃に担当プロデューサーをさせて頂いたお客様の話を、過去のブログより加筆修正して掲載します。
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お二人は、今で言うおめでた婚の若いカップルでした。
どうしてもお腹が目立ってきてしまう前に結婚式をしたい、と会場見学に来られ、その日のうちに仮契約。
招待状の打合せまで済ませて、あとはスポンサーである新郎のお父様の承諾を得るだけ、という状態で帰って行かれました。
あまり時間をおかず、お父様からのOKが出たとのことで正式にご成約を頂きました。
ただ、事情が事情のため、本番まで2か月しか時間がありません。
打合せも立て込んでくるのですが、新郎がとても忙しく新婦しか打合せにに来れない状況です。
お申し込みにも新婦がお一人で来られました。
お申し込み用紙には、お二人だけでなくご両家の親御様のお名前を頂く欄があります。
新郎両親の欄で、手が止まって困っている新婦。
事情を伺うと、つい先日、新郎両親が離婚したばかりだと言うのです。
スポンサーはお父様のみ、よくよく聞けば、現在は新郎新婦+新郎父+新郎祖母で同居しているとのこと。
新郎のお母様はきっと列席しないだろう、とのことで、名前を書くべきか迷っていらっしゃったのです。
「まあ、形式だけのことですから」と、とりあえずお母様のお名前も書いていただきました。
しかし、後日。
その新郎のお母様が、「婚礼費用が高いから話を聞きたい」と、新郎新婦を伴って突然やって来られたのです。
応対した別のスタッフがきっちり説明をしてくれたので費用には納得して下さったのですが、新郎新婦の雰囲気は最悪・・・・・。
後ほど伺ったのですが、お母様が絶対に出席する!と宣言されたそうで、それを聞いたお父様やお祖母様が、「それなら自分たちは出席しない」と言い出し大もめになり、それが原因でお二人の間までギクシャクしてしまっていたのだそうです。
ブライダルに関わっているとわりとよくあることなのですが、こういう問題は非常にデリケートで、私たちプロデューサーの出る幕はほとんどありません。
せいぜい、新郎新婦の愚痴を聞いて、ガス抜きをするぐらいが関の山です。
ましてや離婚したての夫婦の問題・・・実の子どもであっても、夫婦の間のことは計り知れないものです。
ご本人たちで解決して頂くしかない、と、私もできるだけその問題には触れず、身重で打ち合わせに来られる新婦に余計な負担をかけないようにと気を遣っていました。
でも、さすがに配席を決める時には、誰がどこに座るのか、つまり誰が出席されるのか、聞かなくてはなりません。
新郎は意を決したように、「両親ともに出てもらいます。一生に一回のことですから、説得します」とおっしゃいました。
数日後、末席に新郎ご両親とご兄弟の名前が書かれた席次表がFAXされてきました。
そして、さらに数日後。
披露宴のラストで流す、ゲストの名前が入ったエンドロールの原稿が送られてきました。
新郎父へのメッセージ
「いろいろ、ほんとにありがとう」
続けて新郎母へのメッセージ
「産んでくれてありがとう。感謝してます」
この言葉に、新郎の両親への思いが全て込められているように感じました。
説得できてよかった!! ちょっと胸が熱くなりました。
しかし、本番2日前。
お持込みに来られたお二人から、「席次が変わりました」と。
お父様が、どうしてもお母様と同じテーブルにいたくない、とご自身の友人のいるテーブルに移動することになったのです。
しかも、ここに至って「やっぱり出席しないかも」と言い出したそうで、新郎の表情が曇っています。
「大丈夫ですよ!頑張って説得されたんですから」
と、気休めにもならないセリフしか言えず、そのまま当日を迎えました。
新郎は、受付時間にお父様が来られているか心配で、挙式リハーサルにも身が入らない様子。
でも、受付から“お父様到着”の知らせが入ると、ほっと息をつかれました。
そのまま、挙式披露宴は何事もなく進行していくように見えました。
が、お色直しの時のことです。
支度ができたか確認しにお部屋へ行くと、司会者が新郎と難しい顔で話をしています。
お父様が、新婦の手紙~謝辞のとき、起立したくない、と言い出したのをたまたま司会者が聞き、新郎にそれでいいか確認に来たところだというのです。
せっかく滞りなく進んでいたのに、またも新郎の顔色が険しくなっていきます。
「僕は二人ともに立ってほしい。でも、親父は一度言い出したら聞かない頑固者だから・・・。今日来てくれただけでも嬉しい。だから、本人の意思を尊重してやってください」
しばらく考えたのち、こうおっしゃいました。
司会者と相談して、二人でお父様の席へ行き、説得を試みました。
正直、私は立腹していました。
親には親の事情や意地があるのは分かる。
でも、大切な子どもの晴れの日に、そんな意地に何の価値があるのか?
その意地は、子どもの笑顔より大切なのか?
両隣りに座っているお父様のご友人が、「息子のためやろ」と言って下さいました。
私も、
「新郎様、ずっとお父様のことを気にしてらっしゃいました。今日だけじゃありません。お申し込みされたときからずっとです。いろいろご事情はあると思います。でも少しの間だけ、その新郎様の気遣いに応えてあげて頂けませんか?」
と説得しました。
最初は頑なに拒否していたお父様もついに根負けし、とうとう
「立つだけやな」
と言って下さいました。
心の中でガッツポーズをしたのは、言うまでもありません。
お父様が承諾してくれたことを新郎に伝えると、その眼にうっすらと涙が・・・
もらい泣きしそうだったので、できるだけ見ないようにして、お支度室を出ました。
その後は、本当に本当に滞りなく、無事お開きを迎えました。
お父様は一番最後に会場を出て行かれました。
私は呼び止めて、
「今日は本当にありがとうござました。失礼なことを申し上げたかも知れませんが、お許しください。新郎様は、心から喜んでいらっしゃいました」
とお礼を言いました。
「だまされたわ。わし、ついたての後ろに立つんやと思ってたのに」
笑顔です。
「どことは確かに申し上げませんでしたね。でも、だまされて下さってよかったです。後ろじゃサービススタッフにしか見えませんから」
「ほんまやな~!わしはそれで良かったんやけど、まあ、息子のためや」
終始笑顔です。
でもその眼に涙が光っていました。
「ありがとう」
最後にそう言って帰って行かれました。
いろんな新郎新婦がいて、いろんな家族がいて、いろんな事情がある。
そして、私たちスタッフにもいろんな考え方やポリシーがある。
でも、一番に考えるのは縁あってプロデュースさせて頂くことになった、お客様のこと。
この日、お父様から頂いた「ありがとう」は、新郎新婦から頂いた「ありがとう」とは少し違う色と温度で、私の心を今も温めてくれています。
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